味噌汁

飲食

 はじめて妻の実家で夕飯をいただいたときのことである。生憎この日は義父は外泊中、義母も妻も夕食を済ませた後で、わたしはひとり夕食をいただくことになったのだが、味噌汁が出されなかったのである。

 妻に、
「味噌汁は?」
 と、聞くと、
「うちは、味噌汁を作るのは朝だけや」
 と、返された。

 え、うそ!?

 わたしが育った家庭では、食卓にシチューやスープが出されたときやパン食を除き、朝昼晩問わず、必ずご飯の右側には味噌汁の専用席があり、その席が空席になることはなかったし、鍋物の時でさえ、母が、
「今夜はおでんだから、お味噌汁は作らないよ」
 と、但し書きを述べるくらい、番(つがい)の鳥のようにご飯と味噌汁は切っても切れないペアであったのである。

 第一、町の飲食店でも学食でも社食でも、定食には味噌汁が付いているだろ。インスタントの味噌汁でさえ、あさげ、ひるげ、ゆうげがあるだろ。

 食事の最後に味噌汁をすすって食べ終わることで、
「あーおいしかった、ごちそうさま。」
 と、終止符が打たれ食事が完了するんだ。食卓に味噌汁がスタメンとしていないことは、わたしには考えられない出来事で、こりゃ一緒に暮らすようになったら、インスタントの味噌汁でも用意して置かなければならないなと思ったくらいだった。

 わたしは妻に、
「味噌汁がないのはおかしいだろ!」
 と、言いたかったが、義母がいる手前それは失礼だとやめて、妻にキツネ目をしてふーんと訴えてやろうかと思ったが、
「なんや!いいたいことがあるんやったらゆうてみ=3」
 と、返されることが目に見えたので、これもやめて、精一杯タヌキ目で微笑んであげて、夕食を済ませた。トホホのホ〜

 こんなことがあってから数ヶ月経ったある日のことである。

 わたしは、YouTubeの動画で【昭和のある家族の一日】を撮った動画を自分の当時と照らし合わせながら、懐かしく観ていたときのことである。その家族の朝食シーンでは味噌汁が出されたのだが、夕食シーンになったとき、わたしは、「えっ!」と驚いたのである。食卓に味噌汁が登場しなかったのである。

 夕食は湯豆腐鍋だったが、その他にもおかずは出されていた。わたしとしては、このキャスティングなら味噌汁もあって当然と思ったのだが、味噌汁の出番はとうとうなかったのである。

 わたしは頭の中で「え!うそでしょ!?おかしいでしょ?なぜだ?奥さんのミステイクか?」などの疑問形を繰り返し繰り返し自身に問いかけていたのだが、ふと、考え方を180度変えて、ひょっとして一般家庭の夕食には味噌汁が出されないのが普通で、わたしが育った家庭が例外だったの?と、思っちゃったのである。

 そして、ネット検索で『味噌汁いつ飲む』を調べてみると、夕食に味噌汁を出さない家庭は少数派かと思っていたら、うじゃうじゃとまではいかなくともワサワサいるようだ。

 特に『だし文化』の関西では、朝はちゃちゃと作れる味噌汁、夜は出汁からじっくり作るおすまし(すまし汁)文化があるようだ。

 そっか〜、義父母は関西出身だから、夕食には味噌汁が出ないのか。

 ん?だったらおすまし出してよ。

「そんなに飲みたいんやったら、自分で作りぃ!」
 と、妻に言われることは関の山なのでやーめた。
 4人での夕食は、いつもお茶をすすって終わりにしている。

 味噌汁は、料理というほどのものではないようだ。

 おすましは、冠婚葬祭に出される料理(弁当)や、皇族(公家)・大名(武家)・豪農・豪商など上流階級の膳に出される。おすまし(すまし汁)は作り手の腕次第で上手くも不味くもなる面倒かつ繊細な料理。

 それに対して味噌汁は、ぶっちゃけ、味噌にお湯を注ぐだけでできちゃうもんね。具だって、「それ、入れてみようか」で、アラ汁、カニ汁、豚汁などができちゃうから。挙げ句の果て、わたしなんか、ご飯に味噌汁をかけて、サラサラっと済ますこともありますよ。

 つまり、平たく言えば『おすまし=上流階級の汁物、味噌汁=庶民の汁物』って、ことかな。

 因みにわたしは、画像のようなジャガイモとタマネギの味噌汁が好きである。

(-。-)y-゜゜゜

Everyday life in bygone days in Tokyo, 1966 昭和東京

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▼男性は「朝」、女性は「夜」味噌汁を飲みたくなる

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