配達された1枚の絵はがき

日常

 今でも付き合いがある高校時代の友人から絵はがきが届いた。

 この友人は、20代の頃はあちらこちらと海外旅行をして、オーストラリアではホームステイの経験もあった。そして、カナダを旅行した後に、
「(カナダの)港で船乗り相手に売春宿をやれば儲けることができる。一緒にやらないか」
 と、とんでもない共同経営の話をわたしに持ちかけてきたことがあった。

 決して、危ない友人ではない。高校時代もその後も世間で言われるワルではなかったし、別荘と言われる所には行ったこともなく、院卒でもなければ、前科もなく、ラリったこともない。アウトローのアの字も感じさせない、当時も今もフツーの一般人だ。

 したがって、突然売春宿の共同経営の話しを持ちかけられたときのわたしの本音は、

『キミ、大丈夫?』

 だったが、心の片隅ではこの話しに興味があったのかもしれない。
「売春宿なんて、違法だろ」

 と、聞けば、

「いや、港は法律の手の届かない所なので摘発されない」

 と、友人は目を輝かせながら言うし、

「マフィアがやってるんじゃないの?」

 と、聞けば、

「港はマフィアもギャングも手が出せない」

 と、自信満々で言うし、

「開業資金はどうする?」

 と、聞けば、

「俺が出す!」

 と、やる気満々だった。

 しかし、マフィアもギャングもシマにできない港なのだから、きっと彼らもおののくトラップやギミック、暗黙のお約束があるに違いないと思った。

 第一、そっち系の世界のことは全く暗けりゃ、人脈もないど素人のわたしだ。

 怖いもの知らずと言うか、後先のことを考えないと言うか、計画性が乏しいと言うか、発想が奇抜過ぎると言うか、現地の誰から仕入れたネタなのか知らないが、兎に角、そんな商売は身の危険だと察したわたしは、友人のお誘いをきっぱりとお断りした。

 そして、友人はわたしと一緒に仕事をしたかったのか、それともよーく考えたら無謀だと気がついたのか、この計画はあっけなく流産した。

 そんな友人からの絵はがきは、


Merry Christmas and Happy new year!
只今、久しぶりにアメリカを旅してます。
2019年もよろしくお願いいたします。
26,Nov,2018



 と、ちょっと気の早い文面だったが、ラスベガスの絵はがきだった。

 2018年11月28日、この日、友人はラスベガスカジノにいたのだろうか。

 しかし、絵はがきの郵便局用のスペースには、
『切手が買えず帰国してしまいました😥』
 と、局員でもない友人の文字で書かれていた。

 な、なんだ??

 こんな推測ができる。

 友人はカジノで大勝ちしていたのだ。そして、滞在期間を延長して、新年をベガスで優雅に迎えるぞと、舞い上がった気持ちで文章を書いたが、その後に切手が買えないほど大負けしたのだ。

 ベガスで新年計画は、一瞬にして頓挫して、茫然自失となった友人は、泣く泣く帰国し、自宅で荷物を整理しているとき、わたしへの絵はがきを思い出し投函したのだ。

 絵はがきのAir Mailの文字には取り消し線が引かれ、日本郵便の62円切手を貼ってRoad Mail(国内便)で送られてきたが、定形外はがきだったため、不足分の58円は、わたしが支払うことになったおまけまで付けてくれたこの友人のベガス出来事を、勝手に推測するだけで、わたしは実に愉快な気持ちになれるのである。

(-。-)y-゜゜゜

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